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水俣病事件―「混迷」させているのは誰か

水俣病事件―「混迷」させているのは誰か

横田憲一(チッソ水俣病関西訴訟を支える会)

今年(2006年)は水俣病患者が公式に確認されてから50年をむかえる。この節目を前にした昨年3月、環境省・熊本県・水俣市・チッソ・市民団体が、「水俣病公式確認50年事業実行委員会」を作り、協力して事業を行うことが提案され、関西訴訟団にも呼び掛けがあった。訴訟団では、「水俣病を正しく理解して問題に向き合う事業であれば、賛同・協力する」として実行委員会に参画した。そして、「慰霊」「教訓」「地域福祉」「もやいづくり」の4つの事業のうち、教訓部会員として二宮正先生(熊本大学医学部)に会議への参加をお願いした。

私たちは、50年事業として、「チッソの20年間に及ぶメチル水銀排出を許容して、水俣病を発生・拡大させた行政の施策を問い、メチル水銀中毒による健康被害の現状を科学的に検証していくため、問題点を浮き彫りにし、さらに今後の課題として継続して取り組みを行う礎とする」ことを目的とした「連続講座と公開討論会」の企画案を提出し、説明を行った。ところが教訓部会等では市民や団体の代表から「医学・法律に偏っている。学術的であり専門性が高く、一般の人の参加が期待できない」「地域住民にとってメリットが少ない、住民がもっと参加できるような事業が望ましい」「熊本大学や関西訴訟団主催で行うならいいが実行委員会としては偏っている」「出演者交渉等の困難が予想され実現性が厳しい」「裁判の蒸し返しではないか」「糾弾の場になりはしないか」等々の反対意見が出された。司会の事務局からも「(訴訟団企画案については)国、県からいろいろある」との発言もなされた。最終的に私たちの提案は不採用となり、セレモニー的な一過性の行事案が採用された。

私たちは、これら反対意見が、「訴訟団の提案していることは専門的であるから、『地域』の『住民』はわかるはずがない。関心もないだろう」「現在3700名を超す水俣病認定申請者やその地域は『地域』『住民』にはあてはまらない」ということの言い換えと受けとめざるを得ない。

私たちは、実行委員会の「公害の原点と言われる水俣病問題を様々な角度から見つめ直」し、という設立趣旨を逸脱し、また、水俣病に関わってきた市民や団体が、水俣病を正しく理解し水俣病の問題に向き合うことを避けたこのような教訓部会の議事の過程と結果に深い失望と危惧を覚え、「実行委員会脱会に伴う声明文」(2005年11月8日付)を出し、50年事業実行委員会を脱会した。

私たちの具体的な提案内容や、私たちの想い、脱会声明文などは、本会のホームページに詳しく掲載しておりますので是非ご覧ください。(チッソ水俣病関西訴訟又はHP検索で「関西訴訟」)